幻想
02 19, 2016
以前住んでいた家が無くなった。道路拡張工事のためなのだが、かなり大規模な工事であるため、その家だけでなく周辺一帯がすっかり何も無くなっていた。仕方ないことだし、住む時既に知らされており、そのために引っ越しをしたので、今の生活には何の影響もないのだが、そこで結婚生活が始まり、そこで娘が生まれ2歳になるまで過ごした場所で、それなりの思い出はあった。こうなることは始めから頭では理解していたのだが、こうして目の前の状況を見ると、改めて何も無くなるということの意味を思うのだった。簡易的な柵が立てられ、地面はシートで覆われ工事が始まるまで寝かされ、なんとも無表情な場所になったこの場所は、そのうち大きな道路に生まれ変わり車が行き来し、合わせてそこにあった家々の記憶は消滅していくのだろう。多かれ少なかれ大規模工事には、この手の話が多々あるが、いつまでこういう工事が続くのだろうと漠然と思うのだった。何か過剰な動き感じる日常が続いており、荒涼とした気分が消えなかったのだが、その気分に合致する場面を見た感じだ。本当に消費者のニーズはあるのか、それは無理矢理マーケターが作り出した幻想なのではないのか、というフレーズを最近読んで、いたく同感したことを思い出した。

