いかがわしい
01 08, 2010
役者をやりながら別の商売をすることで、役者としてのスキルアップもできるのだ。
両輪で動くことは確かにどっちつかずではあるが、別の仕事を持つことで別の役者との差別化ができるのだ。等々、後ろの席の人が大声でしゃべっていて、ひとりの女性を何かの仕事に勧誘していた。会話の端々に「ネズミ講と言われ続けることで強くなる」とか「もっと気楽に、考えすぎないで」や「月30万円の定期収入はいいものだ」といったヤバそうな言葉がちらついていて、聞かされている人がよほど不安な表情をしたのか、今度は翻すように「○○君は、この仕事をやり始めて大河ドラマが決まったし、海外CMにも出られるようになった」という方向に走り始め、最終的には「どんな大舞台にも動じないメンタル面を強化できるこの仕事は、役者を志す人にとって最高のものだ」ということになっていた。
これは、約束の時間まで余裕があり、時間をつぶすべく入った喫茶店で聞いた会話で、始めは聞き流していたのだが、大きい声のせいでもあるが、徐々に笑えなくなってしまった。それは、僕も彼が話している内容と似たようなことを、自分自身に言い聞かせていたと思う部分があり、こういった話は外側から聞くと、実にいかがわしい印象を受けるのだなあと感じるしかなかったからだ。たぶんあの喫茶店にいた客の多くが、「その話にはのらない方がいい」と彼女に念じていたに違いない。
こと芸術というのは、その途上ラインにいる名の通っていない人間にとって、世間はまだ警戒感をもっている。職業は?と聞かれて「芸術家です」とはそうそう言えるものではないし、言ったところで状況の好転を期待はできない。
そんな覚悟だから大成しないのだ、と言われてしまうのかもしれないが、僕はギャラリー関係の人と話す時と、いわゆる一般の方々と話す時に、自分を分けている。その方が不協和音が起きないからだ。言ってみればいかがわしさを消す方法なのだが、喫茶店での話を聞いてみると、そんな状況によって態度を変える人間よりも、一本道を突き進んでいる人として不器用に生きている人間の方が、どんな仕事をするにしろ、よっぽどいかがわしさを感じさせないのではないかと思えた。
両輪で動くことは確かにどっちつかずではあるが、別の仕事を持つことで別の役者との差別化ができるのだ。等々、後ろの席の人が大声でしゃべっていて、ひとりの女性を何かの仕事に勧誘していた。会話の端々に「ネズミ講と言われ続けることで強くなる」とか「もっと気楽に、考えすぎないで」や「月30万円の定期収入はいいものだ」といったヤバそうな言葉がちらついていて、聞かされている人がよほど不安な表情をしたのか、今度は翻すように「○○君は、この仕事をやり始めて大河ドラマが決まったし、海外CMにも出られるようになった」という方向に走り始め、最終的には「どんな大舞台にも動じないメンタル面を強化できるこの仕事は、役者を志す人にとって最高のものだ」ということになっていた。
これは、約束の時間まで余裕があり、時間をつぶすべく入った喫茶店で聞いた会話で、始めは聞き流していたのだが、大きい声のせいでもあるが、徐々に笑えなくなってしまった。それは、僕も彼が話している内容と似たようなことを、自分自身に言い聞かせていたと思う部分があり、こういった話は外側から聞くと、実にいかがわしい印象を受けるのだなあと感じるしかなかったからだ。たぶんあの喫茶店にいた客の多くが、「その話にはのらない方がいい」と彼女に念じていたに違いない。
こと芸術というのは、その途上ラインにいる名の通っていない人間にとって、世間はまだ警戒感をもっている。職業は?と聞かれて「芸術家です」とはそうそう言えるものではないし、言ったところで状況の好転を期待はできない。
そんな覚悟だから大成しないのだ、と言われてしまうのかもしれないが、僕はギャラリー関係の人と話す時と、いわゆる一般の方々と話す時に、自分を分けている。その方が不協和音が起きないからだ。言ってみればいかがわしさを消す方法なのだが、喫茶店での話を聞いてみると、そんな状況によって態度を変える人間よりも、一本道を突き進んでいる人として不器用に生きている人間の方が、どんな仕事をするにしろ、よっぽどいかがわしさを感じさせないのではないかと思えた。