穏やかでありつつ深いまなざし

06 25, 2015
下から吹き上がる空気にゆるく煽られ続ける薄い布とそれを取り巻く空間を見せる、大巻伸嗣の作品「リミナル・エアー スペース―タイム」を見る人の顔つきが、皆なんとなく似ていた。
その柔らかで優雅な布の動きは、何かに圧倒される緊張でもなく、未知の何かと出会う驚愕でもなく、もう既に知っているつもりだった何かの秘密を見たような表情とでもいうのだろうか、作品を観る者の目から、穏やかでありつつ深いまなざしを引き出している感じで、とても印象的だった。満たされた気持ちというのは、望んでいた何かが手入ることでもあるが、もともと在った豊かさを知ることでもある。今はあらゆるモノが飽和し、あらゆるところまで過剰な説明と理屈が貼付けられる。そんな中、余分な要素を削いで剥がして、最後に残った本質だけを抽出した作品の数々を観ていると、身体の毒素が抜ける。もちろん、圧倒と緊張と驚愕を同時に体験できる作品もある。その黒い巨大な幾何学形態、カールステン・ニコライの作品「アンチ」は、手をかざすと空間を揺さぶる重低音も含め、そこはかとない脅威があった。多様な「シンプル」に、それぞれの本質が複雑に絡み合う見応え充分な企画展だった。

「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか」森美術館で、7月5日まで・会期中無休
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画像:http://www.asahi.com/and_w/fashion/CGfashion105551.htm
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