自分の絵が動く

12 16, 2014
その黒く塗りつぶされた部屋に入ると、壁一面に海中シーンが映されていた。そこで泳いでいる魚達が子供の絵みたいだと思ったら、本当に子供の絵だった。そこでは、魚の塗り絵がやり放題で、大人も子供も黙々と塗り絵に集中していた。なにしろ完成した塗り絵をスキャンしてもらうと、間髪入れずに自分の描いた魚が巨大スクリーンで泳ぎ始めるのだ。自分の絵が動く事実が新鮮なのだろう。大人も子供も本気で喜んでいた。
描かれた魚が、伸び縮じみしつつ、方向転換しつつ海中を泳ぐ。実に様々な絵があるので、その中でいかに目立つかを考えた魚が多かったが、やはり子供の描いた稚拙な魚がクニャクニャしている方が、見ていて愛らしかった。そしてどんなに狡猾に塗り絵をしたところで、その動きを通すことで帳消しになり、そこでゆらめく魚達として馴染んでしまうのが笑えた。

娘はずっとここで塗り絵をやり続けたい感満載だったので、しばらく好きにさせ、僕もやってみた。感想としては、初めてポラロイドカメラを体験した時と似ていた。自分がした行為が機械を通すことで別の何かに切り替わり、瞬間的に明確な具体物として目の前で生まれ変わる感じだろうか。ただ、ポラロイドはそのプリントが手元に残るが、この塗り絵の場合は、スクリーンで動き始めた絵には命が宿る一方、残された絵が抜け殻のように思え、大量に捨てられた紙の魚達が少し哀れだった。デジタル化されることで採用される情報と捨てられる情報があるのだろう。それは仕方ないことか。
他にも2Dの塗り絵が3Dに変換されたり、人がその形を踏むことで映像が反応し切り替わるケンケンパの道とか、遊びとデジタルを融合させた試みが多数あり見事に盛り上がっていた。

「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」というこの企画展は、あの毛利衛さんが館長の日本科学未来館で開催中で、常設展も充実している。10,000枚の有機ELパネルが使用された巨大な球体に、100万個のLEDで映し出された地球とか、二足歩行ロボットのASIMO君とか、そういう先端技術を集結して作られたであろう様々な未来が満載であった。何と言うか、人間そっくりな外見を持つ大人の女性ロボットもいて、これは不気味だったが、そういう好感だけではない違和感も含め楽しめた。企画展は、来年3月1日まで。ちなみに、この魚の塗り絵は、以下3つの要素が子供達に身に付くらしい。娘はそれらを学べただろうか。

1:表現力の発揮/自分自身の中にある創造力に自信を持ってもらうこと
2:多様性の尊重/一生懸命取り組んだ 自分の作品に対する気持ちと同じくらいの気持ちで他人の創造物を鑑賞する機会を持ってもらうこと
3:自己効力感の醸成/自分の選択や行動が他人に見える形で変化をおこしているのだということを自ら感じ取ってもらうこと
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写真は何故かケンケンパの道。カメラを忘れてしまい、携帯電話のカメラになってしまったのが残念。
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