ずっと雨が降っている

08 09, 2013
珍しくはないが、対象の好きなところだけに焦点をあてて、見たくないものはぼかしてしまうという撮影技術がある。被写界深度を浅くするわけだが、そうして出来る写真は私達の普段の視点とは異なり、明らかに雰囲気が助長され抽象的なイメージが付加される。その手法をアニメーションに生かすと、こういう見え方になるのかと思った。

「言の葉の庭」監督 新海誠(2013年日本)
全編ため息がでるくらい綺麗な絵の連続である。自然描写はもちろんのこと、それは満員電車の中でも、散らかった部屋の中でも同じように美しい。だからか見ているうちに、世界はそんなに美しくないんじゃないか、という気分になる。しかし、それは僕の眼が汚れているからであって、こんな風に世の中が見える人もいるのだ、とか考えていたら、被写界深度を浅くする視点が多用されていることに気づいた。少しの工夫で、随分と新鮮な画面になるものだと感心した。

「鳴る神の 少し響(とよ)みてさし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」
(雷がかすかに響いて、曇って雨も降ってこないかしら、そうすれば、あなたの帰りを引き留めましょうに)
「鳴る神の 少し響みて降らずとも 我は留らむ 妹し留めば」
(雷がかすかに響いて、雨が降らなくても、私は留まりますよ、あなたが引き留めるならば)

という万葉集の歌が使われているが、確かにこういう歌に合わせることを考えると、余計な情報はぼかした絵の方が似合うのかもしれない。焦点を絞り込むことで、逆に広がる世界もあるということか。

雨が重要な物語要素なので、ほとんどのシーンで雨が降っている。そして、その雨の表情が実に丁寧だった。「線で色を描き、面で環境光を入れる」のだそうだ、正直ストーリーはどうでもよい感じだったが、その絵の綺麗さからは、学ぶべき要素が相当あると思われた。
kotonoha-18.jpg
画像:http://i.gzn.jp/img/2013/02/21/kotonohanoniwa-trailer/kotonoha-18.png
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画像:http://i.gzn.jp/img/2013/02/21/kotonohanoniwa-trailer/kotonoha-26.png
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