水を得た魚

06 30, 2013
モニターの画面では、その絵の成り立ちがどうもわかりにくく、一度本物を観たいと思っていた作品が、自宅からバスに乗って行ける場所で展示されていた。実にラッキーなことだった。

「こころの魚」 深堀隆介 (調布市文化会館たづくり展示室)
樹脂を水に見立てて、リアルな金魚が描かれている。水と樹脂の見え方は、それが静止していればほとんど差がないので、絵である金魚が、水を得た魚そのままのごとく、実に生き生きしている。絵の支持体とその状況を変えるだけで、ここまで見え方が変わるのかと思い、大変勉強になった。
会場には、その樹脂系の作品以外にも、紙に描かれたものや、骨を想起させる大きな立体作品もあったが、あまりそれらに観るべき何かを感じなかったのだが、その樹脂系作品は、どれも見せ方、描き方、シーンの作り方等、観ていて飽きないのだった。作品のサイズが金魚のサイズを的確に生かしており、どれも小さいのだが、それがまた必然性を伴い良い効果を与えていたと思う。サイズを実物と同寸にする花の木彫で知られる、須田悦弘との関連性を感じた。極めれば、高村光太郎の蝉やナマズに匹敵するかもしれない。

僕が気になっていたのは、その樹脂と絵の馴染み方だった。写真では本当に立体感が出ており、その描き方が謎だったが、本物を観て素直に納得できた。一方向から見える角度を生かして絵にしているので、方向を変えてみると、金魚の立体感はなくなり、そのレイヤー状になっている構造がよく理解できた。ただし、作品のほとんどが俯瞰からの視点で、かつ入れ物に入っているので、その構造は巧妙に隠されており見事だった。

妻も娘も素直に感心しており、受容範囲も広そうだ。会場にはおばさんが多かったが、日本人は金魚との結びつきがそれなりにあるだろうし、また、深堀氏は相当金魚に救われたようでもある。様々な要素が絡まりつつ、この作品が注目される結果となっているのだろう。
7月21日まで。
kingyo.jpg
画像:http://shinnichiya.heteml.jp/shinnichiya/event/2011/08/post-75.html
関連記事
0 CommentsPosted in 展示
0 Comments
Leave a comment
管理者にだけ表示を許可する
0 Trackbacks
Top
プロフィール

任田進一

Author:任田進一
http://www.shinichitoda.com

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ