手を動かす

06 20, 2013
ある作品の構造を勝手にこういうことだろうと解釈して、それが完全に間違いだった時、その作品に対する見方が180度変わる。見ているものは同じなのに同じものに見えなくなる。

「WHY NOT ASSOCIATES」(gggギャラリー)
16 万個の文字を30mm厚の花崗岩の板から切り出して、数百枚のコンクリートパネルに成形し、敷き詰めた作品「コメディーカーペット」の制作過程の片鱗が展示されていた。その文字を並べただけの壮大な作品に眼を奪われ、僕はその美しさに潜む手間がしばらく理解できなかった。そして、製作過程の映像を通してその全貌がのみ込めた時、見ていた作品が全く別の様相で立ち上がり、今すぐイギリスのブラックプールへ行って本物を見たいと思った。

文字が放つメッセージを丁寧にすくいあげる手法が、このグループの個性なのだろう。それは映像作品でも発揮され、どれも新鮮だった。文字が持つ可能性の広さにひたすら瞠目した。
そして、それらは誰も知らない新技術を駆使するとかではなく、かなりなアナログ感を漂わせつつ仕上げられており、とてもわかりやすい。そしてその根本には手の動きや手数、手が作り出す何かこそを信じているような印象を受けた。

彼らが事務所を立ち上げた時、一番大切にしたものが「暗室」で、最初に買ったものが「今買える最高の白黒コピー機」だったそうだ。これによって、彼らが 「ハッピーアクシデント」と呼ぶ、光と影、技術、素材をめぐる実験を繰り返したらしい。確かにコピー機が作る偶然は面白い。わざとコピーするものを動かし て歪んだ画像を作り、創作欲を刺激した人も多いはずだ。ただ楽しい偶然は、それなりの作業をしないと生まれない。世界的に活躍する彼らが、今でも「手を汚して作業している時が最も幸せ」と言っているらしいが、原点を見失わないその姿勢は素晴らしいと思う。僕も、もっと手を汚して作業せねばと思った。

展覧会タイトルは、We never had a plan so nothing could go wrong.(予定は失敗のもと。未定は成功のもと。)
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画像:http://event.japandesign.ne.jp/2013/05/1230/
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画像:http://ameblo.jp/asaba-d/entry-11211398839.html
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