作品との出会い

12 27, 2012
稀に、自分と同じ感覚をこの作家は持っているのではないか、としか思えないような作品と出会うことがある。それは有名無名関係なく突然訪れる。そういう出会いは、もうひとりの自分とバッタリ出くわすようなもので、深く理解し合っている他者との関係以上に生々しく、さらに爽快というわけでもないが、これ以上の刺激は今のところなく、そういう会合を求めて僕はギャラリーや美術館を彷徨っている、と言っても過言ではない。これは、人生を賭けてもいいと思った「作品」と出会ってしまった2人の話。

「楽園のカンヴァス」原田マハ(新潮社)
画家と作品の関係は、当事者である本人以外知り得ない。本書は、アンリ・ルソーの代表作「夢」と酷似した作品の真贋を巡って、幼少の頃より彼の作品を愛し研究してきた2人の男女の戦いと、その麗しい交流が描かれる。徹頭徹尾のルソーオタク同士が、ここぞとばかりの知識をぶつけ合い、どちらがよりルソーを深く理解しているのかを勝負する。歴史的な価値付けが曖昧だったルソーに対し、丁寧な視線を向けてきた2人である。しかもそれぞれ個人的な事情も抱えており、負けるわけにはいかないのだった。物語にはお約束な謎の伝説的コレクターや秘蔵資料等も登場し、ハリウッド映画のようで、ベストセラーになったことも頷ける。

装丁は「夢」がそのまま印刷されている。そして読前と読後では、その見え方が劇的に違ってくる。ぐっと鮮やかに迫って来る。それは結構新鮮でうれしい感覚だ。
説明不要で衝撃を受ける作品がある一方、作家の事情や完成への物語といった知識が、作品と自分を繋ぐ入り口になることもある。個展をしたのに、ギャラリーがその場所を記さない案内を作ったために、誰も観に来てくれなかったという、本当だったら間違いなくトラウマになるであろう人生を歩んだルソーだが、これからは、そんなエピソードだけではなく、素直な刺激を受けつつ彼の作品を観ることができそうだ。そう思えただけでも読んだ価値があった。
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画像:http://artmeigakan.blog90.fc2.com/blog-entry-50.html
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