うつけ

11 27, 2012
自分はそれなりに頑張ってきたと思っていたが、それは影で自分を助けてくれた人がいたからだった。自分の能力や努力なんて、彼の献身的生き方に比べれば、まるでお話にならない。己はただの虚けだった。そういう他者の力をありがたく思い出させてくれる話。

「影法師」百田尚樹(講談社文庫)
「永遠のゼロ」が動揺してしまうくらい面白くて、もう少しこの作家を読もうと思って手に取った。こういう純粋な世界を現代で作るのは厳しかったのだろう、設定が江戸時代であった。今「しかと心得た」とか「お慕い申しておりました」などとは言わないが、当時はきっと不自然ではなかったのだろう。舞台のような台詞が嫌みなくしみ込んできた。そしてこの話は、こういう言葉のやりとりだからこそ成り立つように思った。

この作家特有の癖なのかもしれないが、実在するにはほど遠い理想的な人格者が物語に出てくる。その見事な行為の連続に慣れてくると、自分はいかに俗物であるか、世の中はどうしてこうもダレてしまったのかとか、余計なことを考えてしまうのだが、たぶん著者はそういう輝度の高い人を描きたいのだ。調べてみると「探偵!ナイトスクープ」の放送作家を長く続けていたらしい。この番組に意識を奪われた人は多そうなので、人の心を掴むのが上手なのだろう。読み途中が実に楽しいのだった。
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任田進一

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