死者との継続時間

11 13, 2012
亡くなった人との関係をいつまでも大切にしたいという思いは、得てして現実離れする行動に繋がる。これは、父親の持ち物から偶然鍵を見つけた少年が、その鍵を差し込むべく存在するであろう穴を探し求める話。

「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」監督 S・ダルドリー(2011年アメリカ)
唐突に肉親を失う衝撃は、味わった者にしかわからないだろう。もう父はいない、という事実はそうそう受け入れられるものではない。特に本作のように、父親との交流が最も楽しい時間として機能している少年にとって、その現実は残酷以外の何ものでもない。少年は亡き父との時間を継続すべく、遺品から見つけた鍵を自分へのメッセージと受け止め、生前何度もやった謎解きゲームのごとく「鍵穴」を探し続ける。

以前、余命4ヶ月と宣告された6歳の少女が、両親への愛を死後も伝えようと、家中に何百通も絵手紙を隠していた、という実話があった。悲劇のどん底であろう両親が、亡き娘からのラブレターを日常生活の中で、偶然見つけるシーンを思うと、とても言葉にできるものではないが、その手紙を見つけるたびに親は、娘との時間の継続を意識するだろう。しかし、厳しいとは思うけれど、そういう時間はいつか途切れる。死者との関わりを、いつまでも続けているわけにはいかない。生きている者は、生きた現実に向き合わねばならない。

この映画では、少年の鍵がどこにはまるのかが解かれた時、死者との継続時間も終わり、そこには酷な結果が待っている。しかしこの経験を経て、再び少年が現実に向き合うその時、ある救いは訪れる。終盤に、この少年の母親も、実は鍵穴探しをする息子の行動を必死に予想し、先回りしていた事実が明かされる。それはとても感動的なのだが、夫を失った妻も息子を通して、死者との継続時間をそこで過ごしていたのだろう。大切な家族を失いつつも、これからも生活を続ける糧として、この鍵をめぐる亡き父親との交流が、2人の中ではどうしても必要だったということか。
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http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD19777/gallery/p004.html
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