こってり

10 23, 2012
たとえ面白くても、それをやり過ぎるとしつこくなり消化不良を起こす。このシーンは凄いと思わせるものでも、それがこれでもかと延々続いてしまうと、もうわかったから終わりにして欲しいと思う。事実、映画が終わった時、僕はほっとした。

「ロボット」監督シャンカールアニマトトロニクス 主演ラジンニカーント(2010年インド)
度肝を抜くシーンがあると聞いて、実に楽しみにしていたのだが、結局最後までそのインド映画独特のこってりした感じに馴染めなかった。確かに、要所要所にショッキングな場面も加えられ、度肝を抜かれるシーンもあったし、5歳児も眠らないまま見続けられる面白さはあるのだが、どうも全てがしつこく出来ているので、くどいという印象が抜けないのだった。
たぶん終わり間際の出来事は、涙で満たされることが意図されているのだろうけれど、僕はようやく終わるという安心感に満たされていた。途中でミュージカル的に挟まれる、唐突なダンスシーンも別にあっていいのだが、どうも長い。次々に衣装が変わり場面が変わり、その喜びが表現されているのだが、もうそのへんでいいのでは、と毎回思わせる感じで、途中からその歓喜に対して共感できなくなっていた。

内容としては、ロボットが感情を持つことによって起こるトラブルと、その能力を悪用されてしまうことでの惨劇が描かれる。こう書いてしまうと随分あっさりしているが、あっさりしている部分は微塵もなく、登場人物の顔ももちろん濃い。
本作は、監督が劇中の新型ロボット同様に10年の構想で作り上げ、インド映画史上最大の予算をつぎ込んだ超大作で、同国での映画としては史上最高の興行収入を記録したらしい。たぶんインド人にとっては最高のエンターテイメントが、カレーのごとく様々に味わえ、絶妙な混ざり具合でまとまった作品なのだろう。勝手なイメージになってしまうが、僕の中では、インドとはもっとゆっくり生きている方々が多い印象だったが、そうでもないのだろうか。

たぶんハリウッド映画ばかり見ていたからなのだろう。映画のリズム感みたいなものが、固定化されてしまい、柔軟に対応できなくなっていると思われる。あの絡み付くようなヒンディー語もこってりした印象に拍車をかけていた。しかし、それはそれを母国語としている人にとっては普通の言葉なのだ。そこで目を閉じてしまうと何も見えない。慣れた世界は馴染みやすいが進歩もない。幅を広げる必要性を感じたものの、では主演のラジンニカーントの出世作「ムトゥ踊るマハラジャ」(1995年)を見る勇気は今のところない。
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任田進一

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