見せ方

09 08, 2012
緻密な作業が刺繍糸を通して明解に伝わってくる。丁寧な仕上げとよく練られた展示方法は、作品の小ささを見事にカバーして、見応えがある空間を作り上げていた。作品にスポットライトががっちり当てられていることで、見る方向を変えるたびに刺繍糸がチリチリと光り、思わず触りたくなる。糸を作品に使用する人は意外に多いが、ここまで密度を凝縮している作品は他に見たことがない。

「The Man - Machine (Reprise) 」青山悟(ミズマアートギャラリー)
糸では描写に限界がある。しかし平面的に分割された色面が、刺繍糸で縫い付けられていると、稚拙に見えそうな予想を覆して、全く新しい絵画的世界が体験できる。刺繍のことは詳しくないが、これは刺繍の世界では珍しくないのだろうか。
僕は伊藤存の、やりっぱなし的見え方がどうにも馴染めなかったのだが、青山悟の作品はどこまでも容赦なく完成されていて、非常に気持ちよい。その表裏を合わせるべく考案された見せ方も、バランスよくデザインされており参考になる。この人の作品を色々な場所で見たけれど、必ず何か素直でない展示手法が試みられていて、飽きさせない。
見せ方ばかり気にして、作品の持つコンセプト等々に視点がいかないのはいけないことだが、思いもしなかった展示手法というのは刺激的だし、本物を体験できてよかったと素直に思える。今回も実物のミシンが置かれていたり、その他の工夫が随所に見られ楽しめた。

例えば、杉本博司のコストがかかったプレゼンテーションは、ほとんどエンターテイメントだが、もちろんそこには、最大限作品を堪能してもらおうという精神と、作品が発している力を周囲が阻害しないように、細心の注意が払われているということでもある。それは作品を見せる側の大切な心配りに他ならない。展示空間全体を見渡す、入り口から入って数秒の意識に気がついている人と、そこに全く興味がない人がいる。青山悟はその数秒をかなり厳密に計算していると思われる。長時間工業用ミシン針の先を見続けた気合いが、空間全体にも行き届いていた。今月29日まで。
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任田進一

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