ミステリアス

04 26, 2012
シリーズごとに作風がまるで変わってしまう作家がいるが、その作品を並列することで、今まで見えなかった基盤としての共通点が浮上してくることがある。変わっていたのは、要素としての部分的な問題であり、根底の何かは変わっておらず、シリーズを見直すことでより深くその作家性が理解できるとすれば、それは新しい発見にも繋がる。

「The world turns over」中比良真子(neutron tokyo)
恥ずかしながら名前と作品が一致していなかった。グループ展でも一緒に展示をしたことがあり、以前の個展も観ていたのに、今回の展示がそのシリーズとは違っていたため、全く別の方かと思ってしまった。ポートフォリオを観て「ああこの方だったのか」という、まるで、バラバラに散逸していた記憶のピースが一気にまとまる感覚は、気持ちよいものであった。
人それぞれの見方があるのだろうけれど、僕の感じた中比良さんの作品に共通する要素のひとつは、空間の飛ばし方ではないかと思われた。絵画にしろ写真にしろ、何かしら主役的な要素がそこには存在するが、中比良さんの作品は、その主役的な要素をわざと描かない、隠喩的な何かがあるのではなかろうか。よくミステリー(例えば白夜行)とかで、犯人像が周りの証言から浮き彫りにされていく書き方があるが、描くべき対象をその対象の周囲や痕跡を描くことで表現しているように思われ、それが独特な空間を生み出しているように見受けられた。今まで「夜景の人」とかで認識していた自分の感覚が、いかに表層にとらわれていたのかを、今回の水のシリーズを観て気づかされた。まだまだ中比良さんの真相には程遠いのだろうけれど、作品を観て行く自分なりの指針があると、次が楽しみになる。そしてまた裏切られたいとか思うのだった。

最終日に娘と観に行ったのだが、ご本人もいらして、しゃべりまくる生意気盛りの5歳の意味不明な話にもつきあってくれる器の広い方であった。きっと対象にあわせて、感覚を自在に変形できる人なのかもしれない。型にはまらないとか、定義できないとか、分析できないとか言われたら、それは明らかに作家の勝ちなのだと思う。
以前「私はミステリアスになりたいんです」と公言する後輩がいたが、彼女の少々幼い人格からすると、ミステリアスな女への道は遠そうであった。(たぶんミステリアスな人は、ミステリアスになりたいとは言わない)しかし、最近久しぶりに再会したのだが、年齢を重ね、転勤を経験し、結婚を経ると、以前の幼さは影を潜め、驚く程ミステリアスな女になっていた。気さくに質問してはいけない空気がそこにはあり、見事な変貌を遂げていた。
全然繋がらないのかもしれないが、作風が変わりながらも「変わらない」作家、言い換えれば本性が見えないミステリアスな作家は、確実に魅力的だと思われる。
Nakahira-image.jpg
「Stars on the ground no.7」 2011年 / 90×146cm / oil on canvas
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「overthere No.6」 (部分) / 2011年 / 970×1300mm / oil on canvas
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「The world turns over No.24」 2011年 / 90×146cm / oil on canvas
画像:neutron tokyo
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