いたずら魂

04 11, 2012
ある程度有名な人の展示を観る時「きっと○○な感じだろう」と想定するのは仕方ない。それはその○○が社会的認知を得ていることで、有名というわけだからだ。つまり、その人の固有名詞を裏打ちする作品イメージがあるかないかで、展示を観る前の心構えは随分違うものになる。

「望郷 TOKYORE[I]MIX」山口 晃(メゾンエルメス)
緻密な描写ブームの牽引役で知られる人だ。日本古来の画風に現代的エッセンスをちりばめる手法で、絵画の地平を広げている。馬とバイクを合体させたイメージを想像する人も多かろう。僕もそう思って、あの入り口をドアマンに開けてもらい(僕はどうしてもこの文化に慣れることができない)8階へ登った。細かいウィットが効いた世界観のある平面作品が、あの空間にどう配されるのか想像し、その差を確認をしようと思った。
そして、鮮やかに裏切られた。一瞬の違和感がじんわりと快感に変わる喜びを再確認した。事前情報を知らなくてよかった。しかし、事前に作風イメージを知っていてよかった。このギャップが気分を高揚させる。ここではその展示作品の描写は避けるけれど、足を運んで実物を観にくる人に、驚きを提供できるかどうかは、作家の力量指針になるだろう。こんなことも出来るのか、と思わせる重要性を知った。
実は、この展示はたまたまそばを通ったから観た。本当は杉本博司の展示を観に来たのだが、こちらはあまりにも想定内で、凄いのだがあまりにもそのままだった。しかしこれは有名すぎる宿命であって仕方のないことだ。
その後だったためかもしれないが、山口氏の展示作品は、あまりにもイメージと異なり、彼の力の深さを実感した。マニアックな描写技術の裏側にある、遊び心をモロにぶつけられ、ひたすら感心していた。もちろん想定内的平面作品もあり、変化球後の直球で思わずつられてしまう効果もあったが、今回の圧巻は、メイン空間の使い方にあると思われた。あの空間をある意味スタイリッシュにダサくできる力に、やられたと思う人は多いだろう。今までこの人の凄さは、その描写力にあると思っていたが、それは間違いで、どうやらそのいたずら魂にあったようだ。5月13日まで。
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