プレゼン上手

05 18, 2010
広い空間はそれだけで気持ちよい。高い天井はそれだけで面白い。
自分が意識できる空間エリアという感覚があって、それが壊れるような場所に足を踏み入れると、いきなり身体のフレームが消え去り自分が感じている引力が弱まる気がする。これは雄大な自然を前にした時にも感じるが、人工物でも充分それを味わえることがある。以前直島の地中美術館で観たモネの部屋は、空間自体を感じさせない工夫が随所にあり、実に幸福な鑑賞ができた。どういう意味をそこに持たせるのかが、いかに重要なのか思い知った。もちろんその展示物の内容が最も優先されるべき事柄ではあるが、そのものが置かれている場所が気持ちよければ、多くの展示物は実力以上の効果を発揮するように思う。
先日IKEAへ行ったのだが、なんだかどれも良い商品に見えた。心が解放されるような空間に家具が並んでいるのだが、実におしゃれに見えるのだ。もちろんおしゃれなものが多いのだが、なんとなく騙されているようにも感じた。椅子など実際に座ってみるとそれほど快適でもなかったりする。しかし、これはそれを買おうと意識しているがゆえに感じる微妙な違和感であって、なんとなくいい気分になりながら座ったとしたら、ほぼ心地よく感じるに違いない。別にIKEAが悪いのではない、逆に上手なプレゼンだなあと思う。家具を魅せることを熟慮した結果がこうなのだろう。ただし、その商品が実際に自宅に置かれた時、ここで感じた以上の快感を味わえるだろうかと思ったのだ。
レストランエリアには様々な椅子があった。低いソファや高さを強調するバータイプの椅子もあり、高低差を上手に使い分け空間を演出していた。もちろん天井は高く、テーブルを照らすライトの高さも様々で飽きない。そこでミートボールを食べながらビールを呑んだ、とっても幸せな気分だった。まあ初めて行ったからでもあるが、視界に入ってくる情報がいちいち新鮮で、どんどん乗せられていく快感を久しぶりに味わった。なるほどなあと何度つぶやいたかわからない。
どう見せるかばかり考えた展示は、時に空虚になりがちだが、あきらかに心配りがない展示を観た時の不信感も無視できない。作品と空間がガッチリ決まった展示を観た時の充実感は、身体そのものが持っていかれる感じがする。そういった展示を作りたいと切に思う。
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