鍛える

02 15, 2012
展示の関連企画として公開制作やワークショップ、アーティストトークなどがあるが、僕はせいぜいトークを何度かしたことがある程度だったので、先日行ったワークショップは実にいい経験になった。その経緯を少し。

今まで隠していたわけではないが、黙々と引きこもり粛々と続けてきた作業の一端を、人に見せることは不安であった。細かく言うと、ざっくりした計画をギャラリーに提出した数日後、その不安は襲ってきた。僕の場合、制作過程というべきシーンは、そのほとんどが水の入れ替え作業なので、見ていて楽しいわけではない。公開制作のように徐々に仕上がっていく過程もない。逆に写真なので出来るときは一瞬で終わる。しかも、その完成形をその場で見せれるわけでもない。一体参加者は何を体験できるのか。
企画としては参加して頂く方々に、何か水中で変化しそうなモノを持って来てもらい、それを現場で投入し僕がそれを撮影するというスタイルで、発案時は何の心配もなかったのだが、何が持ち込まれるのかを予想し始めると、手当たり次第に実験したくなり、まる1日様々なモノで試してみた。結果は散々であった。全然面白くない。ひたすら水替えをしただけだ。明らかに何か工夫が必要だった。1日かけて(僕の想像力の範囲であるが)あれこれ試して微妙だったのだ。参加者のセレクト能力を否定する気は毛頭ないが、不安は拭えないのだった。いっそ持参物を投入する時間は「苦労の時間」として、いかに水が難儀な素材か、ということを理解してもらい、僕が用意した秘密兵器的なもので、水の魅力的な一面を見せ、納得してもらう時間を別に作る方ことを考えた。ただ問題は、その秘密兵器がないことであった。

水に反応するとはどういうことか、僕は初めてここで考えたのかもしれない。今までの土やミルクは、水に反応していたわけではない。その動きに翻弄されていただけなのだ。動きとしての相関ではなく、溶け出すことでの関係を考えると道が開けそうだった。調べた結果、水に溶ける紙「トップシークレットペーパー」が見つかる。なんとか入手し試してみた。見事にその紙は水に溶け広がり、消えたのだった。後はなんとかこの紙を水中で立たせつつ溶ける工夫をすれば、何かしら「水中での変化」を体感してもらえるのではないかと思えた。が、そんな心配は杞憂だった。参加者のバラエティーに富んだ持参品の数々は充分個性的で、シークレットペーパーの変化も珍しかったとはいえ、ソースや入浴剤やゼラチン、雪見だいふくに比べれば、どちらのインパクトが強いのかは明白だった。
やったことはないが公開制作などは、人前で裸になるようなものだろう。多くの作家達が、そういう圧力を自身に課し、能力や胆力を鍛えるわけだ。自分の経験不足を実感する。

さて、今週末まで展示が続いています。お時間ありましたら、またお近くに来られましたら、是非ご高覧下さい。よろしくお願い致します。
http://www.neutron-tokyo.com/gallery/schedule/1202/TODA_SHINICHI/index.html

また、ギャラリーがワークショップの様子を記録してくれました。
http://www.facebook.com/media/set/?set=a.311214168926246.65532.242322105815453&type=1

関連記事
2 CommentsPosted in 展示
2 Comments
By 雅yuki Yoshida02 15, 2012 - URL [ edit ]

先日はありがとうございました!

そうですよね、人に何かを伝えるのって常に不安との競り合いだったりしますよね。

私は自分の制作関係で何かをするということは無いのですが、
前職が衣料品のデザイナー・MDだったので展示会などでバイヤーや取引先に
商品説明したりトレンドとの折り合い説明をどうするかって毎回悩みました。

でもそれも今となってはイイ経験になっていたと思えます。
人前に立つのが大嫌いだった私が
その人前に出たとこ勝負でたつことが出来るようになったのですからw

自分もモノを作るので、これって一見無関係な話でも、
実は根っこで重要だなって感じてます。

作品を人に見せるって裸を人にさらすようなものなら、
制作過程って更に風呂に入ってるのをさらすようなものだと思うのです。

でも、そのお風呂、私はとても楽しく魅力的に思え、
とても楽しく充実した時間を過ごせました。

作る過程のご苦労が垣間見えたところで次回が更に楽しみになりました。
次に作品を拝見する機会が楽しみです。
それまで水の入れ替え頑張ってください!w

By 02 16, 2012 - URL [ edit ]

雅yuki Yoshidaさん、コメントありがとうございます。
お風呂ですか、なるほど。確かにそうかもしれません。
今ソースのプリントをしました。
巻き上がるソースにきっちりピントが合っていませんが、
迫力のあるシーンです。宇宙空間のようです。私には本当に新鮮な画像です。
短い時間でしたが、ご一緒できて良かったです。
これからも、よろしくお願い致します!

Leave a comment
管理者にだけ表示を許可する
0 Trackbacks
Top
プロフィール

任田進一

Author:任田進一
http://www.shinichitoda.com

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ