その間際

01 27, 2012
死ぬ間際に自分が何を見るのかは、その体験をしなければわからない。しかしそれを想像した言葉は色々ある。三島由紀夫の「奔馬」では、夜明けの太陽を見ながら自刃することを至上の願いとする20歳の青年が、その願い叶わず夜の洞穴で自刃する際、脳裏に浮かんだ光景を描写する、三島渾身の一行がある。最後の瞬間に何があるのかは、その期にならない限り不可視である分、作家達の想像を刺激するのだろう。

「End of Photography - 写真の終焉」スティーブン・ピピン(gallery side2)
カメラをピストルで打ち抜く際の瞬間を、打ち抜かれるカメラ自身が捉えるという写真作品である。なまなましい致命傷となる穴がプリントされている。飛び散るガラスが劇的に光っており、見ようによっては美しい。とはいえコダックの件もあるし、写真の終焉というよりフィルムの終わりを暗示させるような、容赦ない断定的な作品と見受けられた。打ち抜かれたカメラも展示されており、意図はわかるものの痛々しいだけであった。汚れたコンクリートやブロックに包まれた冷たい空間も、その冷酷さを助長させ、完成度の高い展示であることは理解できる。しかし破壊や死という虚無的なコンセプトが、現代美術にとって重要であろうものの、会場に響くVTRのピストル音がやたら乾いていて、なんだかひたすら苦しくなる作品だった。
今月27日まで。
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