光の行方

12 08, 2011
人が小さく見える写真を意識したのは、この人の作品を知った時からだったように思う。人そのものを大きく見せるのではなく、その行為を大きく見せるような視点が新鮮だった。

「光は未来に届く」野口里佳(IZU PHOTO MUSEUM)
杉本博司が設計したその美術館は、ヴァンジ彫刻庭園美術館のすぐそばにある。素直な空間で、壁面もそれほど大きくない。写真作品が確かにはまりそうな感じではある。ヴァンジ彫刻庭園美術館のような劇的な空間変化があるわけではないが、現代的な和が意識されており、丁寧に作品と向き合える場所だった。

色んなことを試す人のようだ。何かひとつのことを延々と突き詰めるのではなく、各テーマを軽々と飛び回れる能力を備えているのだろう。それでも全て野口風になるところが、この作家の強みなのかもしれない。
5歳の娘は、レンズを外したスライドプロジェクターから出ている、ぼやけた光の色彩を長時間眺めていた。レンズを取り去ることで、結ばれた像を再び光に還元する、という作家のコンセプトが理解できていたとは思えないが、移り変わる色の変化というシンプルなアウトプットが、彼女の感覚を刺激したのかもしれない。

ただ、やはり僕は人が小さく写っている「人と鳥」という2010年の作品が気になった。その誰とは特定できない豆粒のような人が、高いところで何やら作業をしている写真を観ていると、なんと無謀な挑戦を人間は繰り返しているのかと思う。その行為の凄さというより、人間の不自由さをあばくような視点が爽快だった。

最後の部屋に「創造の記録」という大学の卒業制作が展示されていた。こちらは建築現場の作業員を神々しく捉えた作品だが、フレーミングが「人と鳥」そっくりだった。しかしそれはとても腑に落ちた。今後の方向性を暗示している初期作品を、最後に持ってくることで「光は未来に届く」というロマンチックなタイトルの意味を示しているように思われた。過去の光が消えることなく、現在まで届くという宇宙空間の話があるが、過去の試みが現在の行為に影響を与えることもあろう。初期作品が放った光は、現在の彼女の作品にも確かに届いているようだった。
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任田進一

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