タイミング

04 02, 2010
読みかけの本がありながらも買い足す性格なので、購入時期が不明かつ未読の本が、常に何冊か部屋に転がっている。その中の1冊を先日手に取った。本は読むべき時に読めばいいと考えているので、内容が頭に入らない時は、次のタイミングが来るまでよく放置する。これも最初の10ページ位まで、何の事かさっぱり理解できない文章が続き、その類いと判断し閉じようかと思ったのだが、そこから先が思わぬ展開になった。どういう状況で、僕がこれを買ったのかは覚えていないが、何か理由があって読まずに放置したのだろう。ただ、読み始めたのがなぜ今なのか、という偶然には驚く。この内容を僕が20代で読むのと40前にして読むことの差は大きいからだ。

「人生の親戚」大江健三郎(新潮社)
物語の多くは事件と共に話が進行する。その事件とは「変化」と置き換えてもいい。よくあるタイプとして登場人物達の恋愛や対戦や死などがあげられる。しかし、子供の自殺を経験する親の「変化」は簡単ではない。この話では、障害者の兄弟を持つ親が、それをどう受け止めて生きるのかが描かれている。
僕の読書時間は通勤途中が多く、それも睡眠を取りつつ読むゆるいものなので、この展開を全く予期していなかった者としては、いじめが原因で車椅子の生活を余儀なくされた利発な弟が、先天的障害を持つ兄に自殺を説得し、それを兄弟で決行するシーンを読み、電車の中で感情の整理がつかなくなり困った。そして、もっと困ってみたいとも思った。仕事がなければこのまま読書に没頭したい気分だった。まだ途中なので、そういう本があると日常が充実する。

贅沢だがこと本に関しては、その額を払える力があるなら出会ったその時に、思い切って買ってしまうことは大切かもしれない。すぐ読まなくてもいい。ただそれが本屋にあるのか自分の空間にあるのかで、その後手に取る距離が変わる。また、その時理解できなくてもいつか理解できる時が来るかもしれない。一度すれ違うとその貴重な機会は、ほぼ失われるのだから。
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