母の切手

10 20, 2011
母が携帯でメールができるようになった。それまで一切ネットに触れたことがない人だった。たぶん今もネットで何か見るとか、調べるとかしたことはないと思う。もちろん実家にパソコンはない。以前、勧めたが拒絶された。母の浮世離れ感は気合いが入っており、今後も生活スタイルを時代に合わせるつもりはないようだ。そんな母だが、もういい歳だし一人暮らしだし安否が心配だからと、妹が携帯メールを覚えさせた。先日、初めてうちに来てくれたのだが、道中の状況を的確にメールで伝えてくるので、結構使えるらしい。

そんな母が、僕が学生の頃からずっと続けてくれているのが、月に2~3回葉書をくれることだ。内容は健康に気を使うこと、とにかく無理をしないこと。家族が出来てからは、絶対に無理をしないこと、とにかく家族を大切にせよ等々が、言い方を変えてブレない安定感と共に「相変わらず」書き続けられている。そして今までは、いわゆる切手不要の郵便はがきを使用していたのだが、ここ最近は厚紙に直接切手を貼って送ってくるようになった。驚くのが、そこに貼られている切手の古さだ。刷られている年代を見ると、だいたい40年前の切手らしい。母の年齢で計算すると、新婚当初から僕が生まれる頃ということになる。なぜ母がそんな切手を持っているのか謎だが、超人的な保存&管理能力を備えた人なので、本人にとっては大したことではないのかもしれない。しかし、そういう切手は、ただの葉書を別物する力がある。もしかすると実は切手収集の趣味があって、もういい歳だし、保存ではなく使用することを決意したのかもしれない。勝手な思い込みかもしれないが、これを母が集めたんだなあとか思いながら、その古い切手を見ると葉書の重さがまるで違ってくる。

ものすごくアナログなこの葉書と比べて、デジタル化によって変わってしまった通信手段の姿をどうこう言うつもりはない。ただ、この時代に40年前の切手を50円分貼って、厚紙に変わらぬメッセージを記す母の姿は実に母らしく、そのスタイルを崩さない格好良さをつくづく見直してしまうのだった。

IMG_3901.jpg
関連記事
0 CommentsPosted in 生活

Previous: ネックレス

Next: jump
0 Comments
Leave a comment
管理者にだけ表示を許可する
0 Trackbacks
Top
プロフィール

任田進一

Author:任田進一
http://www.shinichitoda.com

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ