07 29, 2011
僕は東京都調布市に住んでおり、周囲の空き地には次々に新しい家が作られている。限界まで分割された土地に建つ、庭のない1階が車庫を兼ねる3階建てタイプの家が目立つ。これは東京の典型的な傾向らしい。

「家の外の都市の中の家」東京オペラシティーアートギャラリー
アトリエ・ワンの自宅兼オフィスである「ハウス&アトリエ・ワン」や西沢立衛の有名な「森山邸」、北山恒の「祐天寺の連結住宅」がメインに展示されている。3作品の共通点は、周囲を受け入れ他者との交流を積極的に作り出すこと。世帯人数が2.0以下となった東京での個人の孤立化は深刻だろうし、土地が細分化された家々の密集シーンを俯瞰すると、確かに空気の流れが分断され健康感がない。

パリのあの町並みは、19世紀半ばにナポレオン3世が20年ほどで作り上げたらしい。個人の意志によるそのコントロールされた統一感は(バリケードが作られないように等々の腹黒さはあれど)美しく、建物の中身は変化しているのかもしれないが、外観の大きな変化はほとんど見られない。逆に東京は、強大権力が都市形成に及んでいないため、その土地は約120万の所有者によって複雑に細分化され、中身はもちろん外観の変化も著しい。建物は壊され作られを繰り返し家の平均寿命は26年とのこと。そんな状況をどうするのか、どう前向きに捉えるのかが展示コンセプトになっている。

第12回ヴェネチアビエンナーレ国際建築展日本館の帰国展にプラスαしたこの企画は、国際展という仰々しさがなくラフな提案もあり、特に「意外に外でも暮せる」というパネルは思い切っていて面白い。また、西沢立衛の「森山邸」の縮小模型があり実際にあの集合住宅の中を歩けるのだが、中にいるように外にいる感覚は印象的で、狭そうとはいえ実際の生活がどうなるのか非常に興味深く、孤独死や自殺者の増加という問題を思うと、こういう開放的な空間で他人同士が仲良くなり、理想的なコミュニケーションが生まれ、、、という話は信じてみたい。シェアハウスの増加も目立ってきているようだし、家の概念も変化してきたのだろう。しかし一方、単身者の増加も歯止めが効かない、それはつまりプライバシーを大切にしたい、密な関係はご遠慮したいという気持ちの表れと思えなくもない。
ただ「森山邸」のような世界トップクラスのスタイリッシュな集合住宅に住んでみたら、それは気持ちも一新されるだろうし素敵な交流も生まれそうだ。そういう可能性、つまり生活を別世界に変えてくれそうな気がしたことは事実。
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