3つの展示

07 09, 2011
名和晃平の展示を観に東京都現代美術館へ。シンセシスという展覧会のタイトルロゴがキンキンに尖っていて、彼の作風を上手に表現しており、クールでクレバーで最先端で活躍する人の展示を、多くの若い人が観に来ていた。彼の作品は何度か観ていたので、確認のような見方になるかなと思っていたが、ほとんどが最近作られたもので、その心配は杞憂だった。もう工業製品のようにシリーズ各々の作成システムが確立しているのだろう。そして大きい。やはりこの見上げるような巨大さは、非日常的で驚ける。特にPOLYGONと題された作品群は、いかにもアナログとデジタルの境界を彷徨う現代を象徴していて評判も良かろうと思われた。空間に対して作品が密集し過ぎかとは思ったが、女性の立像は文句無く美しかった。
各部屋のライティングが切り替わることで、作品の空気も一新していく効果があり、全体的に観やすく秀逸な展示だった。回顧展的復習をさせられた感じのある、森美術館での小谷元彦とはその充実度合いに差があった。ただひとつ個人的な感想として、クール過ぎるゆえの冷たい印象を拭えなかった。つまり温かい作品ではない。優秀だけど本音は隠しているという感じ。

同時に開催されていた「木を植えた男」のフレデリック・バック展もせっかくなので観た。こちらは彼の人生集大成なので、幼少の頃から近作までの約1000点が並ぶ回顧展。まあひとりでよくぞここまでという圧倒感は観ていて疲れるほどだ。さっきの名和晃平と比べても仕方ないが、クールでは全くなくひたすら温かく熱い作品群だった。そういう企てなのだろうけれど、家族やカップルが多かった。

しかしながら、今回一番心が揺れたのは常設展示だった。何年か前はいつも同じ作品が並ぶただのコレクション展示だったのに、最近は様相が代わり格段に面白くなった。今回のテーマは、「サイレント・ナレーター/それぞれのものがたり」と題され、特集展示として石田尚志の作品がクローズアップされていた。その規模はもう立派な個展であって、ドローイングアニメーションというジャンルの魅力を見直すきっかけになった。数分前に観たフレデリック・バックのアニメーションとどうしても比較してしまうのだが、こちらも充分力強く熱い。(温かくはない)僕は結構展示を観る速度が早い方で、あまり立ち止まることがないのだが、じっくり座って観てしまった。
そして3階にあがり、常設展という名の企画展「サイレント・ナレーター」へと続く。ここでは、それぞれ「聞く物語、見る物語」「ばらばらとつながりの物語」「小さくて大きい物語」として3つのテーマに作品が分けられていた。正直、個々の作品はそれほど好きになれないものばかりだったのだが、その並べ方に意味を付けるだけで全く違う全体像が脳裏に形成され、久しぶりの感動を覚えた。嫌いな素材ばかりなのに調理が上手なので予想外の美味が堪能できた感じ、といえばいいのだろうか。例えば、大画面を細い鉛筆でさらりと落書きしたようなスッカスカな作風で知られる落合多武と、こってり感満載の大竹伸郎「ゴミ男」を同時に見れたりする。どちらも極端で好きではないが、両者が並ぶと欠点を補い合う夫婦を見ているようで何だか微笑ましい。割れた皿が散乱する暴力的なジュリアン・シュナーベルを観た後に、荒木珠奈の暗い空間に浮かぶ無数の小箱に灯る、光のインスタレーションを見上げた時、そのコードで繋がる小箱達がまるで世界の相関図そのものであるかのように思え、今日見た作品達が凝縮された光に還元されたようで、まるで芸術のひとつの奇跡を見た気分だった。これほど体験がものをいう展示は久しぶりだ。お勧めしたい。

名和晃平「シンセシス」(8月28日まで)
フレデリック・バック展(10月2日まで)
MOTコレクション「サイレント・ナレーター/それぞれのものがたり」
特集展示/石田尚志(10月2日まで)全て東京都現代美術館にて開催中
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