カメラ好き

04 28, 2011
やさしい先生が行う授業のような雰囲気で、その歴史から検証してくれる非常に親切な本。先人達がいかに写真に向き合ったかが解りやすく解説されている。また周知の事実だが、写真の歴史はまだ始まったばかりだと再認識できる。そして、絵画が行ってきたような冒険に比べ、写真の在り方がいかに保守的かを考えてしまう。そういった知ってるつもりでいたことが、明るく整理されていてサクサク復習できた。画像も多く丁寧で好印象。しかしだからといって、著者であるホンマタカシの本質が掴めるわけではない。

「たのしい写真 よい子のための写真教室」ホンマタカシ(平凡社)
写真愛好家とは、ある意味自分が撮影する写真以上に、カメラのメカとしての機能を愛している方々のことだと思う。それはとても結構なことだし、とやかくいうつもりはない。ただ僕はそういう意味で、カメラに対しての愛情があまりなく、必要な機能がそろっていれば問題ないと考えている。逆にカメラやレンズの種類や、細かい性能の話をされると、無知なことが多くオロオロしてしまう。本書の中で時々表れる著者のカメラオタク的な記述が、実はほとんど理解できなかった。例えばこんな感じ、以下引用。

ライカはM3。ご存じライカMシリーズの王様。ファインダーの綺麗さはピカイチ。レンズはズミクロン50ミリ、f2ヌーキー付き(近接撮影用眼鏡)。ボクは広角系より50ミリが好きなので、50ミリのファインダーが最初から出ているM3が気に入っています。1954年発売のライカM3の1962年製。ボクの生まれた年のライカです。~

もちろん僕はライカを持っていないので、この部分は何も理解できない。そうなんすか。という感想だ。しかしこういう話を聞くと、ああこの人はカメラが好きなのだ、ということが明快に伝わるし、そういう人であれば、作品も信じて(被写体の真偽ではない)いいかもなと思う。話はズレるが、カメラ機材とは何であんなに高値なのだろうか。容赦というものがいっさいない。僕はデジタルカメラを使っているけれど、その理由は経済的にフィルムでこれ以上続けるのが無理だからだ。初めてそれを手にした時、その枚数無制限の事実に、無限の力を手にした気分だった。もちろんそれだけで問題は解決しないし、それは新たなドロ沼への入り口でしかなかったが。ただ、カメラやレンズの種類をより多く経験しているということは、その写すべく対象に対峙する際、最善の武器を使うという選択がより綿密にできるわけだ。今まで目をつむっていたが、痛いところを突かれた気分だった。
写真集や写真家達への言及も多い。しかしそれは著者の勤勉さを物語るものではなく、その作品や人に触れられる喜びに満ちており肯定感が強い。結局「写真を愛するホンマタカシ」がわかっただけで、先日展示を観て感じた空虚さは謎のままだ。紹介される作品や写真家のエピソードを読むと、ご本人は空虚とは無縁の人に思えるし、写真に接することが実に楽しそうだ。「たのしい写真」に嘘はない。しかし、僕は彼の作品から「たのしさ」を感じることができない、そこには歴史的視点を通した、今の写真の在り方を模索する知的で冷徹な印象しかない。ただ著者が「作者の死」について語っている通り、作品と作者を無理に繋げる必要はないのだろう。僕が感じた空虚とは、作者が作品と意図的に乖離する技に慣れていなかっただけなのかもしれない。
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3 CommentsPosted in 読書
3 Comments
By kammy by kamitani toshio04 28, 2011 - URLedit ]

ホンマタカシさんの「たのしい写真」は
とても楽しく読みました
写真初心者の私にも歴史がわかってよかったなと思います
またホンマタカシさんについては
お話したいことが沢山ありそうです
美術手帖に雪の上の血痕の写真が掲載されていましたね
(先日のこのブログでも紹介されてましたね)
ちゃんとまだ見てませんが興味深いです

By kammy by kamitani toshio04 28, 2011 - URLedit ]

ハンス・ウルリッヒ・オブリストの書籍
届きました
読み応えがありますね これは
かなり賢くなりそうにも見えます
本の装丁も素晴しい

今日青木が大阪に来てて見せました
私が読んだら彼女に回そうと思います

ありがとうございました

By 任田進一04 29, 2011 - URL [ edit ]

血痕の作品は大きなプリントでした。
雪の白と赤と木製のフレームがよく似合い、
実に綺麗な美術品になっていました。
大きな空間で、大きな作品を観るのは、
やはり非日常的な快感がありますね。

本が無事に届いてよかったです。
僕も少しづつ読んでいるところです。

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