ターミネーター

03 04, 2011
生命には欲望を制御する本能があるらしい。例えばお腹がいっぱいになると、食欲は一時的におさまる。これは欲望の在り方が、その生命にとってより良く機能すべく進化した結果らしい。であるので根源的な欲に関しては、個人差はあるが節度が備わっていると考えていいそうだ。しかし、最近になって生まれた欲望、つまり金銭欲に関してはこの節度がないらしい。際限のない欲望の暴走は、非常に危険であり危惧すべき問題だろう。

「自殺する種子 アクロバイオ企業が食を支配する」安田節子(平凡社新書)

特許を駆使して儲けまくるアメリカの穀物企業が、いかに卑劣な行為を続けているかを、データをそろえて訴える本書は、痛めつけられた農家の人々が読むと、よくぞ書いてくれたといわんばかりのものだろう。
詳しく知らなかったのだが、種子は育てた作物からとって次の年にまくものだと思っていた。しかし現在それは法律で禁止されており、農家は種会社から種を買わねばならないらしい。そこで登場したのが、「ターミネーター・テクノロジー」と呼ばれる、次世代の種を残さない種子(とれた種をまいても発芽しない)である。都合のいい技術だ。農家は強制的に毎年「自殺する種」を買わねばならない。個人農家からすると自家栽培で種をとれないことを法律化されてはたまらないだろう。生産性が高いとか、飢餓救済に役立つという宣伝もされたようだが、明らかにその企業が、種で儲けようとしているに過ぎない。
利益のため手段を選ばないやり方の数々に驚く。特許をたてに、弱者である個人農家を告発し、賠償金をせしめていく手法は頭がいいのかもしれないが、実に意地汚い。そうまでして金が欲しいのかと思う。ただ、この巨大企業の特許侵害請求から農家を守る法律もできたらしい。2008年カリフォルニア州で採択されたようだ。そのサインをしたのが、アーノルド・シュワルツェネッガー知事というのが、なんとも皮肉。

他にも、むしる手間を省いた羽のない食用鳥の開発とか、生命を馬鹿にしたような、利益と効率優先の末路が次々に示される。なぜ、途中で「やめようよ」と言う人間がいないのか不思議に思う。もしくは皆おかしいと気づきつつ、止まることが許されない状況に追い込まれているのだろうか。
杉本博司が、後期資本主義の限界について述べている。破滅のスパイラルに巻き込まれた人間の欲望はもはや制御不能であると。そして、いまいちど人間は人間になった頃の記憶を思い出すべきだと。しかしこの言葉も、彼自身の作品を正当化するための売り文句かもしれない。
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