国際展示場にあるビッグサイトで撮影をする必要があり、数日通ったのだが、あの巨大空間の中で人波に揉まれ続けながら、大量の情報を摂取していると、ある時点から自分がよくわからない状態になり、感じる力が極端に衰えてしまう。更に妙な不安感に襲われ始め、加速度を増して自分自身が稀薄になっていく。ビッグサイト酔いと名付けている。今回もやはりビッグサイト酔いになった。正直、あまり行きたいと思わない場所のひとつと言ってもいい。ただあそこから帰る際、東京駅行きのバスがあるのだが、それだけは良いのだった。大変時間がかかるため、とてもお勧めできるものではないが、ある意味、今の東京を眺める事はできる。茫漠としながら、バスに長時間揺られていると、希薄だった自分が、徐々に自分の濃度に戻っていく。ぼんやりする時間の貴重さを思う。
