ガラスの壁

09 07, 2015
去年定年退職されたガラス作家で元上司の作品を、代官山のヒルサイドフォーラムまで観に行った。「GATE」と題されたその作品は、透明ではなくフロスト加工が施され、向こう側が見えない状態だが、その中心付近に長方形の穴が斜めに開いており、その穴から少しだけあちら側が見える。穴が斜めになっていることで、出口に行けば行くほど透明度が増していく。穴の内側はかなり研磨されており、ダークグレーから透明へのグラデーションが鮮やかに流れていた。
その元上司は、自由な会社員として有名だったが、その定年ゲートを抜けた分、さらなる自由を謳歌されているに違いない、なんとも想像がしやすい。その作品「GATE」の反対側からあの笑い声が聞こえるようだった。

せっかくなので少し足を伸ばし、同じガラスの壁に狼が激突している、蔡國強の「壁撞き」を観に行った。写真で何度か見ていたが、実物を目の当たりにするのは初めてだった。ベルリンの壁と同じ高さのガラスに、99匹の狼が空を駆け抜け、ぶち合たり落下している。99という数字は、中国の道教で「永遠の循環」を象徴するらしく、展示されている狼も円環状に配されており、その壁を越えようとする懸命な姿勢がよく伝わってくる。とはいえ、壁を越えた狼は今のところ1匹もいない。この作品は「東西ドイツがベルリンの壁崩壊後も意思統一出来なかったこと」を表現しているらしく、所蔵先もドイツ銀行であった。なんともわかりやすい。
挑戦を繰り返す狼達の反対側には、小屋の中で花火が爆発する映像が流れていた。内に秘めた思いに小屋は耐えきれず、最後は燃え上がっていた。炸裂する蔡國強のインパクトは確かなもので、娘(8)は予想外の作品群に目を輝かせていた。さすが蔡國強という他ない。

蔡國強のガラス壁は透明なので、衝突の衝撃で顔が歪む狼の表情がよく見えた。しかし狼達にとって、その向こう側は見えるだけで今のところ越えられない。一方、元上司のガラス壁は半透明で何も見えない。しかしそこには小さな出入り口があり、向こう側に続く何かが開かれていた。しかしその空間はあまりに小さく、人は通り抜けることが出来ない。ガラスの壁には、どこかそういう届きそうで届かない閉鎖性が孕むように思えて仕方ない。

「2015日本のガラス展」東京展は終了。9月12日から10月18日まで酒田市美術館で開催
「蔡國強展 帰去来」(横浜美術館)10月18日(日)まで
タイトルの「帰去来(ききょらい)」は、中国の詩人、陶淵明(とうえんめい)の代表作「帰去来辞」から引用しています。官職を辞して、故郷に帰り田園に生きる決意を表したこの詩は、現実を見つめ、己の正しい道に戻り、自然に身をゆだねる自由な精神を謳っています。(美術館HPより)
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画像:http://yokohama-sozokaiwai.jp/person/11242.html
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yosakoi festival

09 04, 2015
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任田進一

Author:任田進一
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