そろそろ自分の番という意識

10 30, 2013
周囲が面白い面白いというので、今さらだが「あまちゃん」を見た。確かに面白かったが、最後まで見るのに随分と時間がかかった。夜ネットで見ていたのだが、連続で見ていると3時間くらい一瞬で過ぎてしまい、おかげで朝型だった生活が夜型になってしまった。そろそろ次の展示の搬入が近づいており、最後の仕上げに向かうべく行動しないといけないのに、次が気になって仕方なく、無意味にあせって「あまちゃん」を見ていた。やめればいいのだが、次の回のボタンを押さずにいられる動機は睡魔しかなく、早く酩酊するために呑みながら見たが、次回はどうでもいい、という気分になるまでは少なくとも1回に10話ぐらい見ないと納得しない自分がいるのだった。そしてようやく先日、なぜ薬師丸ひろ子だったのかが理解でき、あのふたりがトンネルを抜けたのだった。正直ホッとした。これは「逆あまロス症候群」ということか、これで「あまちゃん」に縛られなくてすむ。せいぜい脳内にあのテーマがしばらく流れる程度だろう。ただ、夜型を朝型に戻すためには早く寝る必要があり、また呑むのであった。なんだか呑んでばかりだ。そして、ようやくいつもの時刻に起きれるようになり、ここ最近は最後の作業に集中できている。

先週末に京都へ行き、先輩や知人の個展やグループ展を観てまわった。それぞれ全く表現手法が違うので、関連性はないが、偶然にも全ての展示で作家本人とお会いでき、その「あっ、どうも」という挨拶の感じは、どれも似ているのだった。作家不在で作品を観ていると、素直にその作品のことを考えられるのだが、作家本人がいると観ることとは別に、自分もしっかりせねばという思いが生まれ、未だ終わっていない作業が思い出され、そのあせりが刺激に変わり、そろそろ自分の番だぞという意識が出てきた。

京都で観てきた展示は以下になります。残念ながら既に終了している展示もありますが、どれも素晴らしい体験ができます。

「やわらかな情景への試み」美津石綋詩 会期終了
http://www.gallery-maronie.com/exhibitions/space5/1920/

「京都慕情」現代美術二等兵 11月2日まで
http://www.voicegallery.org/exhibition_event.php

「言葉のうまれる前に」中村至宏 下田ひかり 大槻香奈  11月13日まで
http://blow-works.com/gallery/press/131025_1113.html

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画像:「やわらかな情景への試み」美津石綋詩展より
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圧倒的な子供感の改善

10 24, 2013
小学校というのは配布物が多い。そしてその中には重要な物とそうでない物が、同じような体裁で混在している。なくしてはならない申し込み用紙と、どうでもいい広告まがいの申し込み用紙の区別がよく解らず、もっと判別しやすくすればいいのにと思うが、そこを真面目に改革すべく動くのであれば、個人的に相当な時間と労力が奪われることが自明なので、どうにも耐えるしかない。たぶん、これまでも多くの人々がそうは思いつつも、立ち上がれないままに今に至るのだろう。毎日のように娘や妻と「どこかにある重要なプリント探し」をしていると、何をやっているのかなあと思う。

保育園にはお迎えがあった。そこで先生にわからないことやその日の問題行動を聞き、それなりの会話ができ、思えばこれが大きい安心感に繋がっていたが、小学校にはそういう時間がない。子供達が、連絡事項をメモり配布物をランドセルに押し込み、帰宅後報告するわけだ。親達は、子供の証言と残された拙いメモと重要そうなプリントで、小学校の様々な日常を判断するしかない。連絡帳もあるが、大抵先生からのメッセージは、最小限のフレーズしかない。そう思うと保育園からのメッセージは、懇切丁寧な日常の光景が書かれており、読むのが楽しかった。ちなみに、この前の先生からのメッセージは「忘れ物が多くなっています」だけだった。社会の子供への接し方が急に変わり、そこに付いて行けていないのだ。先日娘に、忘れ物が多い原因を聞いてみると「ランドセルから出すの忘れてた」などとふざけた発言をする。忘れ物が恥ずかしい、という概念が明らかにない。この圧倒的な子供感の改善は、羞恥心の芽生えを待つしかないのか。ただ思うに、外見的にはそれなりに成長した感じだが、実際まだまだ小さいのだ。昨日、かなり娘に怒ってしまったのだけれど、保育園卒園からまだ7ヶ月しか経っていないことも事実だ。毎日重いランドセルを背負い、休まずしっかり通学しているだけでも充分だ、と思うことにした。
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sleeping

10 23, 2013
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いわゆる壁

10 11, 2013
今は1年生でも体力テストをするらしい。その結果が悲惨だったことで、帰宅後しばらく娘は泣いたようだ。確かにその成績をみると、握力7kgとかソフトボール投げ2m等々、なんとも言いがたい記録が並ぶ。総合評価として機械的に印字された講評も、なんだかシステマチックで心が無く、確かに悔しい。まだ1年生だし、それぞれの種目のやり方も満足に理解していたのか怪しいし、気にする必要もないが、どうやら周りの子はもう少し出来ていたようで、それなりの劣等感を味わったのだろう、妻はなんども慰めていた。
初めてやった体力測定がよろしくない結果だったのは、要領の悪さや運動神経のなんたるかが露呈したのかもしれないが、そんなことは練習がある程度解決してくれる。確かにどうにもならない事はあるが、しぶとくぶつかることで、なんとかなる時もある、等々上から目線でアドバイスしたが、思えばそれはそのまま今の自分にも言えることだった。

いわゆる壁が、幼い娘にも少しづつ立ち上がり始めたのだろう。これからそういう壁が、そこかしこに現れ行く手を阻む。そこをどう捉えるかが問題になり、娘なりの道が出来ていくのだ。子供は気楽でいいと思っていたが、子供は子供で大きな問題を抱えているのだった、小さい身体でそれなりの壁にぶちあたっている様子を見ると、上手く進まない仕事に対して、沈んでいる場合ではないと思え、結局励まされているのは自分か、という夜になった。

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3回も行った場所

10 01, 2013
直島へ行った。3回目になる。最初は2003年頃だった。当時は店も少なく、泊まるところも少なく、たぶんバスの本数も船の本数も少なかった。地図を持って作品を目指して歩くのだが、ほとんど誰とも出会わず終始ひとりで、傘に当たる雨の音ばかりで直島はとても静かだった。何の計画もなく突然思い立って来たので、何処にも泊まれなかった。ずっと雨が降っていて、宇野港に一軒だけあったお店で船を待つ間、たこ飯を食べビールを呑んだが、完全に店というより個人宅だった。ビールは家庭用の冷蔵庫から缶で出され、たこ飯を食べ始めると「母ちゃん、わしもたこ飯」と店の子供が母親に注文し、何故か一緒にたこ飯を食べた。居候の気分も同時に味わえた。
2回目は2006年、お腹に娘が入っている妻と行った。その時は美術館に併設されているホテルに泊まった。宿泊者専用のバスが充実していて、実に快適な移動だった。宿泊者だけが観れる作品も多々あり、無理してコース料理を予約したりして、なんとも贅沢な時間を過ごした。地中美術館もこの頃は完成しており、モネの睡蓮の美しさに息が詰まり、タレルのオープン・スカイを観て、空の色変化に息を呑んた。唯一の問題はお金を使い過ぎて、ため息が止まらなくなったことか。

そして今回3回目。小学1年になった娘を連れて3人で来た。宇野港はずいぶんとオシャレになり、草間の赤かぼちゃがどっしり座っていた。店の数は驚くほど増え、作品を求めて彷徨う人々が(若者からお年寄りまで)そこかしこにいて、英語はもちろん韓国語も飛び交うようになり、バスは常に満員だった。作品数も格段に増え、他の島にもパーマネント作品ができ、この近辺は、一泊で全てを観るのは到底不可能なアートワールドに変貌していた。
そして今回は、妻お薦めのパオに泊まった。これが異文化ながら魅力満載の空間で場所もよく、娘は大喜びだった。夕方に到着したので、そのまま地中美術館のタレル作品を娘に見せようと考えていたが、あまりにもパオとその前に広がる海が素晴らしいので、空の色変化は作品ではなく実物で充分なのではと思え、周囲を散歩して過ごした。調度仕事が忙しくなってきており、波の音はとても心を落ち着かせてくれ、旅行も大切だなあと素直に思った。夜中に外へ出ると、視力の弱い僕でも充分その凄さがわかる程、星が輝いており、何も考えられなくなった。なんとか写真に撮れないかと思い、色々やってみたが、空は広角レンズでも追いつかない程に広く、たいした写真は撮れなかったが、そういう太刀打ち出来ない実物と対峙するのは、逆に気持ち良かった。

数年の時間を経て3回も行った場所は、直島以外にあまり思いつかない。そして毎回、前回以上の満足感を与えてくれることに、ここの凄さを感じた。正直、李禹煥美術館は、小学生にとって「?」そのものだろうが、ああいう贅沢な空間に身を置くだけでも、僕は充分楽しかった。ただ、それなりに頑張ったのだが、新しく出来た作品はほとんど観れなかった。10年前のガツガツした自分はもう影を潜め、しんどい思いをするのであれば「観るのは次の機会でいいか」という、40代の己を実感した。数年後には、他島へのアクセスがさらに充実していますように、また新しい美術館もできますように等々、勝手な願いを投げかけ、帰途についた。
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プロフィール

任田進一

Author:任田進一
http://www.shinichitoda.com

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