赤の効果

05 29, 2012
エルミタージュ美術館展へ行った。細部まで描き込まれた数々の絵を観て、そのどれもこれもが同じような感じに見え始め、眼が慣れてしまったところで、マティスの赤い部屋がドーンと見えた時、実に爽やかなショックを受けた。初めて本物を観たのだが、その予想外の大きさや鮮やかさ等、さすがであった。凄いと思ってはいたが普通にびっくりした。赤の下にある補色のためなのか、とても強度のある赤で、普段印刷物として接している赤と比べだいぶ彩度が低いのに、その絵の中ではもちろん、展覧会のなかでもあの赤は鮮烈に輝いていた。

ある結果をクライアントから待っていて、たぶんその返事は夕方にくるかどうかという感じで、それまで変に時間があり、その間もんもんと考えてしまいそうで、気分を変えるべく六本木へ行ったのだが、やはり絵を観ていても結果が気になり、なかなか集中できなかった。しかし、マティスの赤はそのうやむやを一掃する強さがあった。
僕はある思考に取り付かれてしまうと、なかなか振り払えないタイプで切り替えが得意ではない。そこを考えたところで、無意味であることは理解しているのに、どうも体が反応しない。これは少々深刻な問題で、仕事というのはひとつではなく大体複数で動くわけで、気になる何かに捕われている場合ではない状況が多々ある。今回のように待つしかない返事に対して気をもむのは大変よろしくない。
赤色は気分を高揚させる効果がある。惑わす効果もあるらしいが、沈んだ心を活性化させることは間違いないようだ。よく知られているが、この赤い部屋の赤は当初緑だった。妻子をなくした人がその緑に感じ入り購入を決めたらしいが、マティスは装飾性が弱いと言って、その緑の上から赤を加える。全然違う絵になったはずだが、この変更はその購入者をさらに満足させたらしい。確かに観ていると元気になる。それは芸術の持つ素晴らしい効果だと思えた。
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©Photo: The State Hermitage Museum, St. Petersburg, 2012
©2011 Succession H.Matisse / SPDA, Tokyo
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単純作業

05 28, 2012
最近少なくなっていたが、今回の作品は相当な単純作業が必要になる。同じものを地道に作り続けなければならない。それはたんに外注費を浮かすためなのだが、実は嫌いではない。もちろん一日中やりつづけるのは苦痛を伴うが、期間はまだだいぶ先なので、今のところ2日で1個とかでよく、日々の習慣のように作っていけばよいので、それはある意味楽しい。どこが?だが、それはこういう単純作業ほど、スキルや手際の成長が実感できるのだ。昔、土の球体を何百と作る必要があり、作っていたのだが、百個ほど作る間に、両手で同時に作るとか、微妙な重さの違いが分かるとか、生活するには全く役立たない技術が、必要以上に向上したのだった。たぶんあの時、泥団子作り大会があれば、かなり上位に食い込んだのではないかと思われる。今回はその泥団子ではないが、制作時間や出来などは、終わり頃には飛躍的に向上するかもしれない。ただ、それは毎回少しでも工夫していくことが必須で、その微妙な実験の積み重ねが、当初とは大きく異なる結果を導きだすわけだ。思えばそういう向上心は、生活全般にわたって言えることだが、そういう姿勢で向き合えるものと、なかなかはそうできない類いのものとがある。全てに対してそういう対応ができれば、将来は随分違ったことになるのだろうけれど。
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ゆで卵

05 26, 2012
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集中しているとしゃべらなくなるようだ。
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許されるコスト

05 24, 2012
次回の展示でライトボックスを使おうと色々画策しつつ、外注さんとのやりとりを進めていたのだが、どうにもこうにもコストの壁が立ちはだかり、ライトボックスは諦めることにした。LEDタイプで穏やかにランダムに明滅しつつ、、とか色々理想があったが、やめることにした。やめる決意を固め、その旨関係会社に伝えると、なんだかせいせいするものだ。これで複雑な配線図を理解する必要も、プログラミング関連のザ理数系な文章を読む必要もなくなった。たぶん首を突っ込んだらいけない世界だったのだ。ちなみに初回に制作費用として算出された金額は4,500,000円。もちろん僕が基盤を前に、緻密なハンダ作業を敢行すれば、だいぶ金額は下がるだろう。しかし秋葉系コネクションを持ち合わせておらず、理系世界からの逃避を決め込んでいた僕に、そういう設計図を理解できる自信はない。何かの奇跡で完成したとしても、展示期間の約1ヶ月、故障もせずに動き続けてくれるのかと思うと、毎晩心配で仕方ない。やはりプロの力に頼る方が懸命だろうと判断した。しかし、あの金額ではどうもにならなかった。一応、コストダウン案も相談してみた。しかしそれでも1,500,000円はどうしても越えてしまうのであった。あまりこういう具体的な金額をだすのは良くないかもしれないが、正直妥協案の金額も僕にとっては充分驚愕の数字だった。もちろん金額が全てではないが、不可能な額というのはある。あまりリアルに聞いたことがないし、もちろん人それぞれなのだが、作家の方々はどの程度までが、制作費として許されるコストなのか気になった。
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vs トリケラトプス

05 23, 2012
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正面から攻める姿勢は評価したい。
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プロフィール

任田進一

Author:任田進一
http://www.shinichitoda.com

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