寒いので室内で遊べるところはないかと探し、池袋のナムコ・ナンジャタウンへ行ってきた。そこの福袋餃子自慢商店街という昔懐かしい昭和が再現された空間の中に、蚊取り大作戦~アマゾンの逆襲~というアトラクションがあり、入ってみた。素焼きのブタに乗ってスプレーガンで、アマゾン蚊という大きな蚊を駆除する遊びだった。ディズニーランドでは絶対に採用されないような、妙な企画ばかりが並ぶ中、このアトラクションはその最たるものであった。アマゾンで発生したという蚊が実にチープで脱力する。単なる射撃ゲームをなぜこのような形にしなければいけなかったのか、僕には何もわからなかったが、順番待ちをしている人達は皆笑顔だった。何故か。アトラクションを説明するバイトさんのしゃべりが実に面白かったのだ。内容ではない、そのしゃべりのイントネーションが絶妙で、笑うしかないのだった。
ナンジャタウンでは「こんにちは」が「ナンジャラ~」なのだが、これが相当イタい。バイトの方々は、羞恥心を捨て「私は恥ずかしくなんかないぞー」という意気込みのもと頑張っているのだが、残念ながらそれは、そのまま伝わってしまうもので、努力は認めるけれど一緒に「ナンジャラ~」と言う気にはなれないのが、正直なこちらの気持ちであった。(小さな子供は素直に言っていたが)
そういった苛烈なアゲインストの中、この蚊取り大作戦~アマゾンの逆襲~を説明するバイトのお姉さんは、見事に羞恥心を自虐的な笑いに変えて、客を喜ばせていた。特徴としては、文節の最初と最後の音を、妙にのばすことがテクニックのようだ。「みぃ~なさぁ~ん、ナァ~ンジャラ~ア」と普通の声量で挨拶を始めたそのバイトさんは、終止このしゃべりを崩さないのだった。最初は猛烈な違和感を感じるものの、全てをこの口調で言われると、退屈な飲食禁止とか手荷物は足下に、とかいうお決まりの台詞が実に新鮮に聞こえるのだ。飛行機内のアナウンスをラップでやって、喝采を浴びる動画 (
http://www.youtube.com/watch?v=fD-yyMzF8lI) があったが、こんなに凄くはないが、それに近いかもしれない。バイトさんは自虐的苦笑を混ぜつつ、その特有なしゃべりで客の心を掴んでいった。身長110cm以下の人はそこで遊べない規則で、娘がたぶんアウトだったのだが、低めにラインが設定されていたのだろう、そのバイトさんは「ク~リアで~す」と小声でも自らに課したしゃべりを遂行し、娘をアマゾン蚊退治の旅へ送り出していた。
ディズニーランドで働く人々の素晴らしさがよく取りざたされるが、その頂点と比較してこのナンジャタウンは、料金に差はないものの、非常に厳しい位置にランクしていると思う。しかしそういう場所で、妙なオリジナルのイントネーションを編み出し客を喜ばせている人の存在は、僕にとって強い印象を刻む出来事だった。はっきり言って蚊取り大作戦はつまらなかった。二度とやることはなかろう。しかし、あのイントネーションを聞く事に関しては、リピートしてもいいと思った。