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09 20, 2011
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09 19, 2011
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立つ

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09 17, 2011
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空間への意識

09 16, 2011
芸術家は文章力にも長けている人が多く、誰のものであれ大抵面白い。そして評論家ではないからなのか、書かれている内容の多くに共感でき、作品からは見えてこない作家像を垣間見れることは、どんな些細なことであれ参考にならないわけがない。
しかしどうもその断定的な書き方のせいか、素直に読めない人がいる。彼の作品は、世界的に評価も高く、おそらく日本人で最も成功した芸術家だろうし、僕も東京ではもちろん、地方で開かれた展示を何度も観に行った、著作も全て手に取った。しかし読み進めるうちにいつも同じ気分になってくる。
「あなたはそんなにえらいのですか」と。

「空間感」杉本博司(CASA books)
いつも通り美しい装丁で、きっちりデザインされている。まるで彼の展示のようだ。そのクオリティーの統一感には、ほとんど裏切られたことがない。

僕はデザイン科を卒業したので、モノの見せ方が非常に気になってしまう。よく個展会場に作家のポートフォリオが置いてあるが、大抵その残念な作りに脱力する。まあ作品が勝負だし細かいことに目くじらを立てる必要もなかろうが、しっかりしている人は展示も作品の仕上げも同等の完成度があるように思う。そしてその最先端にいる人が、僕の中では杉本博司なのだ。
正直彼の作品はもう何度も観たし、シリーズのバリエーションが増えるばかりで、作品それ自体に対してどうこうはもうないのだが、何よりその展示空間が見事なのだ。完璧なデザインだとほぼ毎回思い、身が清められるようでいつも惚れ惚れしていた。そう、作品を観に行くというより、その空間を体験したいがために、僕は新幹線に乗っていたのだった。

本書は、世界的なスター建築家が建てた美術館で、彼が展示をしてきたエピソードの数々が、キッチリした写真と合わせて紹介されている。そのどれもこれもが体感したかったと思わせる展示で、彼がいかに空間と作品の相性を気にしていたかがよくわかる。
彼の作品には様々なシリーズがあるが、その多くがどれも声高らかに何かを主張するというよりは、既にある事実を、歴史を俯瞰するような悠然とした視線で見直すスタイルのように思われる。つまり威丈高ではない懐の深そうな作品ということだ。ただ作品の主張がある意味エレガント過ぎて控えめだからこそ、空間の強度を上げ、隙を作らない展示構成が必要だったのかもしれない。

さてここからなのだが、彼は美術館を建てた建築家の背景を踏まえ、その意志を引き継ぎ、愚かな運営システムをねじ伏せ、空間構成に注力し、杉本作品がいかにして名だたる建築家達の美術館と調和したかを、脈々と語り続けている。博学ぶりが発揮されたその文章は、展示空間同等に隙はなく切れ味も鋭い。しかし懐が非常に狭い印象を受けた。彼の古美術にまつわる美学から外れたモノはあっさり切り捨てられる。そして、海外では皆そうなのかもしれないが、自分がいかに凄いかというアピールが随所に散見される。彼は過去の人々を尊敬しているのだろう、とにかく現代に対する苦言が多く、そこに生きている人間の価値はない、とまでは書いていないが、どうやら愛情は薄そうだ。己の美意識のみに忠実に生きている人なのかもしれない。
しかし、そういう姿勢も理解できないではない。魑魅魍魎としたアートの世界は、常に変化し続け、評価の移ろいも激しく、信頼などどこにも無いのかもしれない。トップで走る人であれば尚更その感情は強かろう。そんな中、千年以上存在し続けた古美術品の魅力が、彼にとって信頼の基準となった経緯は頷ける。
数学のように先人達が証明した理論を利用して新しい定理を発見という流れは、アートでは実現しにくい。毎回個人個人のゼロからの出発になることが多い世界なのだ。そういう意味で、現代の作家達は過去の作家と比べて進化しているかと考えると、甚だ疑わしい。必死に退化をごまかしているだけかもしれない。

冬の終わりに丸亀で「アートの起源|科学」を観た。そこで彼は、資本主義がいかに破滅のスパイラルに巻き込まれているかを指摘し、「アートが今できることは、思い出すことかもしれない、人が人となったころの記憶を」と語っている。今それに反論できる何かを僕は持っていない。
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任田進一

Author:任田進一
http://www.shinichitoda.com

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